
「会場に有線LANがありません。Wi-Fiも弱いです。でも配信したいです」
そんなご相談をいただくことが増えています。
通常、安定したライブ配信には「専用の光回線(有線LAN)」が必須と言われます。 しかし、建物の構造やセキュリティの事情で、どうしても理想的な環境を用意できないケースもあるでしょう。
今回は、「鉄筋・窓なし・工事不可」という、配信担当者にとっては悪夢のような通信環境下で、1,700名規模のMicrosoft Teams配信をトラブルゼロで完遂した事例をご紹介します。
もしあなたが「ウチの環境で配信できるか不安…」とお悩みなら、この事例がひとつの希望になるはずです。
1. 直面した「3つの絶望」と極限の通信環境
今回ご依頼いただいたのは、ある企業の全社福利厚生イベント。 約1,700名の社員様に対し、Teamsを使って映像を届けるというミッションでした。
しかし、現場調査(ロケハン)で判明した通信環境は、あまりにも過酷なものでした。
- 社内LAN利用不可: セキュリティ規定により、会場の有線・Wi-Fiは一切使用禁止。
- 電波の監獄: 会場は「鉄筋コンクリート・窓なし」。キャリアの電波が極端に入りにくい構造。
- スピードテストの結果: 持ち込んだモバイルWi-Fiでの計測値は「下り13Mbps / 上り7Mbps」。
通常、HD画質の安定配信には「上り30Mbps以上」が推奨されます。 「上り7Mbps」は、いつ映像が止まってもおかしくない危険水域です。回線工事をする時間もありませんでした。
2. 起死回生の「負荷分散」と機材戦略
この細い回線(パイプ)で、1,700名もの視聴者に映像を届けるにはどうすべきか。 私たちが選んだ戦略は、限られた帯域を1滴も無駄にしないための「徹底的な負荷分散」です。
【機材構成:役割の物理的分離】
1台のPCで「配信」も「管理」も行うと、通信負荷で共倒れになります。
そこで、贅沢にPCと回線を使い分けました。
- 映像入力: Sony FX6(シネマラインカメラ)×3
- スイッチャー: Roland V-8HD
- 配信PC(ホスト): 2台(850名/部屋×2つに分割)
- 回線: SoftBankとauのモバイルルーターを分散利用
スイッチャーで合成したプロクオリティの映像を2台のPCに分配。それぞれのPCは「映像を送る(上り)」ことだけに専念させ、チャット確認や参加者管理用のPCは完全に別の回線で用意しました。
キャプション:複数の回線とPCを使い分け、リスクを極限まで分散させました。
3. 勝因となった「Teams設定」の裏ワザ
ハードウェアの工夫だけでは足りません。 モバイル回線の細い帯域を守るため、Microsoft Teams側でも特殊なチューニングを行いました。
① 「着信ビデオをオフにする」の徹底
配信ホストPCにて、[表示] > [その他のオプション] > [着信ビデオをオフにする] を設定。
これにより、参加者850名分のアイコンやカメラ映像データ(下り通信)を一切受信しない状態にしました。
「下り回線」がパンクすると、結果として「上り回線」の安定性にも悪影響が出ます(ACKパケット遅延など)。
これを防ぐための鉄則です。
② 送信帯域の意図的な制限
FX6という高画質カメラを使いながらも、Teamsへの送信ビットレートはあえて抑制しました。
「最高画質」を目指して止まるよりも、「そこそこの画質で、絶対に止まらない」ことを最優先した設定です。
4. 結果:トラブルゼロでの運営完了
結果として、約1時間のイベント中、映像の停止や音声の途切れは一度も発生しませんでした。
終了後、クライアント様からは驚きの声をいただきました。
「実は去年、社内の高速Wi-Fiを使って自社でやったのに、通信トラブルで止まってしまって…。 今年はモバイルWi-Fiで、しかもあの電波状況で、なぜ去年よりスムーズにできたのか本当に不思議です。魔法のようでした」
5. 「環境が悪い」と諦める前に、HERO IS YOUへ
今回の事例で証明されたのは、「回線速度の速さ」だけが配信の成否を決めるわけではないということです。
- 環境に合わせた適切な解像度設定
- 「着信ビデオオフ」などによる帯域保護
- プロ機材によるリスク分散
これらを適切に組み合わせることで、悪条件でもプロフェッショナルな品質は担保できます。
「会場のネット環境に不安がある」 「絶対に止まりたくないイベントがある」
そんな時は、ぜひHERO IS YOUにご相談ください。 どんな環境でも、最適な「解」を見つけ出し、確実に映像を届ける。それが私たちの仕事です。


